気ままに日向坂

日向坂46のコンサート(セットリスト)についてをメインに、音楽活動について思ったことを書いていきます

嵐から学ぶ、コンサートにおける最重要曲の配置

日向坂46の7枚目シングル『僕なんか』が発売されました。表題曲と裏表題である『飛行機雲ができる理由』を、私はMV発表直後からコンサートのどの位置で使うかという想像をしているのですが、妥当な扱いだと重要な役割、つまりコンサートのピークを担うことになるのではないでしょうか。となると、やはり本編終盤のブロックに配置されるのが妥当で且つ一般的なイメージになるかと思います。ですが、コンサートにおいて重要な役割を持つ楽曲は果たして、一般的にイメージされるであろう「重要な曲=本編終盤」で使うことが正解なのでしょうか。またこういった無難な使い方をしてもそのコンサートにおいて価値をもたらすことが出来る楽曲なのでしょうか。

楽曲への評価に関しては、私の専門外ということだけでなく、特に今回は「小坂菜緒の復帰」と「渡邉美穂の卒業」、また「東京ドームコンサート後の日向坂46」などという様々な文脈が重なっていることも含めて解説する力量も知識もないので、この記事ではコンサートにおける最重要曲(以下、メイン)の使い方を、私のコンサート学の全てと言っても過言ではない嵐から学びたいと思います。

取り上げるコンサートですが、明確にメインが存在すると私が考えるコンサートのみ紹介します。本稿における”明確”とは「そのコンサートのハイライトとして容易く思い出すことが出来る」という意味で、「初めての国立といえば聖火台からトロッコで降りてくるあれだよね」という感じで私が思い出せるものです。そういう意味では客観視出来ていませんが、あくまで「メインの使い方を推測し学ぶ」という趣旨なのでお手柔らかに。なので上記の理由から、『アラフェス』や『BLAST』シリーズのような特別公演は選考対象外となります。また、同じような使い方をしているコンサートもあるっちゃあるので、そこは重ならないように選出しました。

 

取り上げるコンサート,メイン,配置*,配置の推測・解説

*曲数は盤のwikiから拝借。OVERTURE、JUNCTION、INTERLUDEなどのセクションを除いた、本編の楽曲のみ曲数としてカウント

 

2007年春
『ARASHI AROUND ASIA+ in DOME』

『COOL & SOUL』5/28曲目
当時のグループの勢い(ブレイク前夜からブレイクまで)を表現
このコンサートは、前年の全国ツアーとアジアツアーを経てパワーアップしたグループを、初めてのドーム公演(京セラ、東京)で表現したもの。『COOL & SOUL』は2006年に発売したアルバム『ARASHIC』に収録されている。2006年はKAT-TUNがデビューした時期で、なかなかヒット曲が生まれていなかった嵐の思いがけないライバルとなった。その『COOL & SOUL』では「ya so cute 二番煎じ」という不特定の後輩へのメッセージともとれるリリックもあるが、2017年発売のアルバム『「untitled」』のリードトラックである『「未完」』で、当時(2006年~2008年と推測)の自分たちを「僕らが拓いていく時代 なんてあの頃はいきがり」と綴っている。ただ、若さ故の危なっかしさと勢いがグループの今後を占う時期に間違いなくマッチし、特に2005年に蒔いた『花より男子』(主題歌は『WISH』)という種が『COOL & SOUL』というグループの成長を経て『Love so sweet』の大ヒット(グループのブレイク)として大きな花を咲かせた。この流れは翌年の国立競技場コンサートにまで繋がっていく(そのコンサートのオープニングは『Love so sweet』で、クロージングは映画『花より男子F』の主題歌である『One Love』だった)。

つまりこのドームコンサートは、連続性のあるグループの勢いを体現している。セットリストはアジアツアーとほぼ同じであるが、1曲目の『A・RA・SHI』は、"FIRST CONCERT"と称したアジアツアーでの自己紹介的な選曲とは違う意味合い、つまり「パワーアップした嵐を堪能してくれ」という自信と誇りが伺えるし、2曲目の『サクラ咲ケ』では煽りもそれに応えるファンも圧巻で、4曲目の『Lucky Man』では3曲目の『ハダシの未来』で散ったファンの視線をセンターステージに集めることで、イントロのコール&レスポンスと相まってより一層一体感が生まれている。なのに、同曲ラストに魅せた特効と同時にステージから消える演出は、次の『COOL & SOUL』までのジャンクションへとスムーズに繋がっていて違和感を覚えない。

『COOL & SOUL』を携えてアジアツアーを成功させパワーアップした自分たちを、『Love so sweet』以降の「国民的グループ」という未来に繋げていく過程は、思いがけないライバルの出現までもが必然であったと言えよう。そして以降の快進撃は、アジアツアーでの演出(上述のリリックで中指を立てる)のような宣戦布告的にライバルを蹴落とす手法を取らない。つまり、相手を下げるのではなく自分達自身を高めたことによってライバル(それまでの自分達も含む)より上回ってることを表現することが容易になったということであり、それは自分達への紛れもない自信と誇りを手に入れたからだろう。これは、ジャニーズ事務所においてはあのSMAPに次いで開催した2008年夏の国立競技場コンサートですぐに発揮される。

 

2008年夏
『ARASHI AROUND ASIA 2008 in TOKYO』

『Re(mark)able』19/31曲目
会場、時間帯、演出、背景がマッチしたベストなタイミング

このコンサートは、①「グループ初の国立競技場公演」②「デビュー10周年を目前としたグループの大ブレイク」③「アジアツアー1ヶ所目」④「野外ライブ」という主に4つの要素が重なっている。複数の要素が重なっているという点においては日向坂46の初東京ドームコンサートと似ていて、さらにセットリストの作りも「楽しい曲・盛り上がる曲を用いてまずは会場を満喫する」という点で同じだ。

国立競技場コンサートを制作していくにあたって演出担当の松本潤は、会場や東京の中心という街の特徴を活かした演出に重きを置いた。開演から明るい間は野外ライブならではの開放感、黄昏時にはステージの一点に集まって照明を極力使わないようにする、日が落ちてからは東京の街灯り、そして『Re(mark)able』では聖火台を利用した。特にこの火を演出として際立たせるためには、日が落ちてから、つまりライブ中盤以降にこの曲を配置する必要がある。まだ空が明るいのに聖火台に火を灯しても観客の集中力はなかなか上がらない。ドームコンサートのように基本的には真っ暗な状況で演出のバリエーションを増やしつつ野外の利点を活かす。『Re(mark)able』を19/31曲目に配置した理由の一つは以上の通りだろう。

そしてもう一つは、「国立競技場=オリンピック」という点に楽曲もコンサートも注目していることがヒントになる。しかし、このコンセプトを表すには本節冒頭で述べた複数の要素を先に消化しなければならない。
まずライブ序盤では、①「グループ初の国立競技場公演」ということで「会場全体をまずは満喫する」というテーマで進んでいるように見える。セットリストは以下の通りだ。

01. Love so sweet
02. Oh Yeah!
03. きっと大丈夫
04. La tormenta 2004
05. Happiness
06. ハダシの未来
07. アオゾラペダル

01ではメインステージではなくセンターステージから登場してアリーナ席を含めた360°から”国立”を感じ取り、02~04でアリーナを周り、05~07でスタンドを一周している。

少し逸れるが、このオープニングブロックでは演出担当・松本の持つ高い技術を感じ取れる。
まず03のラスサビから櫻井と松本は04の着替えのためにステージ下に捌ける、そして04のメンバー紹介ラップソングの冒頭を担当する2人がまずは登場、その間に他の3人が着替えて順に登場していき、全員が揃ったところで大ヒット曲の『Happiness』を披露する。このような「着替えを含んだ一連をノンストップで繋げている」箇所で、楽しい曲・盛り上がる曲をただ並べて組んでいくのではなく、『La tormenta 2004』を緩急としても早替えの時間としても使用した。これらがスムーズに進んだことによってオープニング直後に作られた空気が途切れることもないし、ファンのボルテージも極端に下がらない。寧ろ、『Happiness』と『ハダシの未来』という最新曲・大ヒット曲とライブ定番曲を使ってスタンドを周ることで「メンバーが近くに来る喜び」からなるボルテージの上昇にさらなる効果が期待出来る。解説しながらあっぱれである。

これらの「楽しい曲・盛り上がる曲を用いてまずは会場を満喫する」という構成は夏の野外ライブの高揚感ともマッチする。また、黄昏時という時間帯に合わせた選曲も素晴らしいため、本節冒頭で述べた③以外の要素をライブ前半までで消化していることになる(M16の『WAVE』では会場全体で文字通りウェーブを行った)。

そしてメインの『Re(mark)able』だ。本節冒頭でも紹介した通り、このコンサートは初めての国立競技場コンサートでもあり、アジアツアー1ヶ所目でもある。つまり「これからアジアへ行ってくるぞ」という出発挨拶のような役割も担っている。加えて先述したオリンピックの要素も出てくる(2008年は北京オリンピックの年)。ただ、これら全てをひっくるめたのが『Re(mark)able』だ、とは言い切れない。どういうことかというと、この曲はMC終わり2曲目に披露されるが、MC終わり1曲目の『風の向こうへ』の紹介を北京オリンピックの話と絡めており(櫻井は同大会で自身初の五輪メインキャスターを務めた)、そこから「国立競技場=オリンピック」に関連した映像が流れ(特に1964年東京オリンピック)、『Re(mark)able』までのジャンクションでは「アジアツアー1ヶ所目、夏季オリンピックの年、デビュー10年目を迎えた年に国立競技場でコンサートが出来ること」というこれまでの要素を全て含めた流れを盛り込み、聖火台が点灯、聖火台からメンバーが登場する。

つまり、根底にある野外ライブという演出が、このコンサートとメンバーを取り巻く複数の要素とマッチし、二つと作れないコンサートになっているのだ。セットリストや演出・構成は複雑な作りになることはなくスムーズに進んでいくし、新曲の使い方も他では機能しない配置。そういう意味では、本稿の目的の一つである「『僕なんか』『飛行機雲ができる理由』のコンサートでの使い方を考える」にはそぐわないが、「メインまでの流れを1曲目から作っていき、以降もメインからの流れを引き継いでいく」という考えは大いに役立つ。

ちなみに新曲の使い方だが、前年2007年までを新曲扱いとすると以下のようになっている。

Love so sweet:オープニング
We can make it!:未披露
Happiness:M05(上述した通りの使い方)
Step and Go:M20(『Re(mark)able』→『truth』→『Step and Go』と新曲を並べたことでハイライトとして印象に残り、「魅せるブロック」のラストとして夜の国立に前2曲とは違う空気を流す)
One Love:クロージング
truth:M21(メインのカッコよさを活かした完璧な配置、この曲がここにあることでSaGも活きる)

新曲を軸にコンサートを展開していくのは基本だが、「意味のない配置」や「その新曲がもたらすコンサートへの効果が薄い配置」が1曲もない。また、新曲だけでなく表題曲などのこれまで軸になっていた楽曲の扱いで困るのが「使わなきゃいけない」と考えてしまうことだが、そこを無理やり組み込まずにキッパリ使わない。上記のリストでは『We can make it!』が当てはまるが、翌年の10周年コンサートでオープニングブロックの緩急としてとても良い役割を果たす。日向坂に関しても『ひなくり2021』辺りからこの傾向が見られるのでそれは良いことだと思う。

 

2009年
『ARASHI Anniversary Tour 5×10』

『5×10』43/43曲目
絶対的なメインがクロージングにいるからこそ作れるセットリスト

個人的には、感動的な曲をクロージングに起用するコンサートは好きではない。だがこのコンサートは別だ。というより10周年などの区切りの良いアニバーサリーコンサートなら、基本に忠実でベタな作りでも「セトリに不満を言っている場合ではないな」という感じで許せてしまう。それは先日の『3回目のひな誕祭』でもそうだった。

このコンサートの主な特徴は以下の通りだ。

  1. ライブ終盤の定番だった『感謝カンゲキ雨嵐』をオープニングに起用
  2. 1stアルバムを中心にデビュー直後の懐かしい楽曲を多く披露
  3. シングル表題曲を全曲披露 
  4. ライブ後半にはシングル表題曲のメドレーを披露
  5. ソロコーナーでシングル表題曲をソロバージョンとして披露

リーダーの大野と松本がデビュー15周年の2014年に「10周年の時は感動的な感じというより、ハッピーで楽しい感じだった」という旨の発言をしたように、このコンサートにそこまで感動的な雰囲気はないように見える。『明日の記憶』でさえメンバーの笑顔が見られる(メインスクリーンに幼少期からの写真を流す演出によるもの)ようなコンサートだったが、ようやく感動的な雰囲気が訪れたのがクロージングの『5×10』と直前のメンバー挨拶だった。

私が日向坂ドームコンサートにおいて「『約束の卵』を1曲目に歌えば究極あとはなんでもいい」と言ったのは、そのコンサートにおいてその演出が全てだと思ったからだ。実際には「定番化されたセトリの作りを特別変えることなくドームコンサートを進めることで、”ドームコンサートまでの日向坂”を表現する」という正解があるが、これもまた"全て"であると考える。その演出を1曲に集約させるかコンサート全体で表現するかの違いだがこれが両方に共通しているのは確かだと思う。5×10ツアーも、「『5×10』をクロージングで歌えば究極あとはなんでもいい」という前提があったのではないか。それがあったからこそ『感謝カンゲキ雨嵐』をオープニングに持ってくることが出来、「『A・RA・SHI』をあのスケスケ衣装で歌う」という演出でライブ後半に配置することが出来たのではないだろうか。

つまり、「『5×10』という絶対的なメインがクロージングにいるからこそ、セトリの作りも柔軟になった」ということである。落合中日の岩瀬仁紀のような存在だろうか。当時すでに嵐ファンだった私は今でもこの曲のイントロを聴くと泣きそうになる。耳から直接繋がっているかのように涙腺が”準備”するのだ。私がそう思っているということは他の人も思っているはずで、それだけの楽曲のためならそれまでヘラヘラ楽しそうに歌おうがスケスケ衣装を着ようが関係ない。ただ、セットアッパーとして重要な繋ぎを務めているのは、メドレーブロック最後の『Believe』だ。これがこのセトリのポイントである。

 

2010年夏~2011年始
『ARASHI 10-11 TOUR "Scene"〜君と僕の見ている風景〜』

『Monster』35/37曲目
「メインはライブ終盤」という基本の上に成り立つ「グループの挑戦」

まずはメイン候補となる曲を挙げたい。アルバム『君と僕の見ている風景』からは、『movin' on』『サーカス』『ギフト』、シングルからは『Monster』だ。そしてこのコンサートには「変わらないまま変わっていく嵐」、即ち「10周年以降の新しい嵐のコンサート」というテーマがあると私は考える。

その要素の一つは、「ラストスパートブロックの後にもう1つ大きなブロック=メインブロックが用意されている」ことだ。これは、ラストスパートで使われるような楽曲をさもラストスパートブロックかのように進めていくところがポイントとなる。セトリはこのような感じだ。

29. PIKA★★NCHI DOUBLE
30. Love so sweet
31. 言葉より大切なもの
32. Believe

- JUNCTION
33. サーカス
34. Re(mix)able-dance
35. Monster

- FAREWELL GREETINGS
36. To be free
37. 空高く

29~32までの太字がその「見せかけのラストスパートブロック」だ。『Believe』が終わるとステージにメンバー1人残った櫻井による英語での挨拶からジャンクションが展開され、メインステージの『サーカス』へ。34のダンスブレイクでセンターステージへ移動すると『Monster』が始まる。大サビで国立ライブお馴染みの花火が打ち上げられ暗転。メンバーによる最後の挨拶を挟んで、クロージングブロックの『To be free』へ、そして『空高く』で締めた。

このメインブロックを展開にするにあたっては、①「前半(MC)までで23/37曲を消化していること」、②「見せかけLSBの前にソロ曲を置いていること」がカギとなる。

①前半(MC)までで23/37曲を消化している

まず①だが、MC以降(=後半)の曲数が減ったことで、メインブロックを中心とした「真面目な曲」と「カッコいい曲」が展開しやすくなった。MC以降からクロージングまでのセトリはこんな感じだ。

- MC
24. リフレイン
25. ギフト
26. マイガール

- JUNCTION
27. Come back to me(松本潤
28. Magical Song(相葉雅紀
29. PIKA★★NCHI DOUBLE
30. Love so sweet
31. 言葉より大切なもの
32. Believe

- JUNCTION
33. サーカス
34. Re(mix)able-dance
35. Monster

- FAREWELL GREETINGS
36. To be free

37. 空高く

太字が「真面目な曲」と「カッコいい曲」だ。
『Monster』に限らずメインを24と25に配置した場合、その後にソロ曲を挟んでラストスパートブロックを展開し、最後に『空高く』で締める、といったやり方でもなんらおかしくはない。ただそれでは普通だ。言い換えれば「これまでと変わらない」作りになる。活動休止発表後に例え情勢が変わってもアメリカ公演を開催しようと尽力した彼らなら、このタイミングでコンサートの改革に努めるのはおかしくないし、寧ろこの"挑戦"が一貫されていることに改めて気付かされた。またこのコンサートツアーでは、所謂”原点にして頂点”である『A・RA・SHI』を一度も歌唱しないという大きな挑戦をしたこともあり、何か新しいものを見せたかったというのは間違いない。

・同じテイストの楽曲を連続で披露する時の注意(「楽しい曲」と「真面目な曲」の違い)
(アイドルの)コンサートにおいては比較的「楽しい曲」の方が、連続で披露しても構成的にも曲の"重さ"的にも成り立つことが多い(当然フルサイズなのかライブサイズなのかで変わってくるが)。またこれらの楽曲は、ブロック内の役割において細かく分類することが出来るが、聴いてて疲れる「真面目な曲」や「カッコいい曲」はそれが難しい。最長で2曲、3曲連続で披露するなら慎重に選曲したい。つまり「楽しい曲」は曲自体の重さがそれほどないので、それぞれに違う役割を持たせて連続で披露することが出来るのだ。故に、MCまでで23/37曲という半分以上の曲数を用いて「楽しい曲」を中心に展開することが出来、後半をわずか14曲で「真面目な曲」を中心に展開することが出来た。

「真面目な曲」や「カッコいい曲」は、綿密に作られたブロックを用いて連続することで、結果的に曲単体の連続に繋げることが可能だと考える。これは、1本目に書いた日向坂ドームコンセトリ考案でも用いた。

- BRIDGE VCR 1
 声の足跡
 JOYFUL LOVE
 こんなに好きになっちゃっていいの?
- BRIDGE VCR 2
 イマニミテイロ
 期待していない自分
 君のため何ができるだろう

日向坂46 東京ドームコンサート セットリスト最終案
「サードブロック」より


このように、後半に「真面目な曲」を集めて展開していくためには、前半に"楽しい"に振り切って曲数を稼ぐことで効果的になる。ちなみに同記事のセトリ前半はこのようになっている。MC(転換点)までで17/27曲を消化出来るよう構成した。

- OPENING VCR
 約束の卵
 Overture

 川は流れる
 青春の馬
 ドレミソラシド
 キュン
 ソンナコトナイヨ
 アザトカワイイ
 ホントの時間
 Right?

 ひらがなけやき(1期生)
 僕たちは付き合っている(1期生)
 永遠の白線(1期生)
 NO WAR in the future(1期生、2期生)
 ひらがなで恋したい(1期生、2期生)
 ハッピーオーラ(1期生、2期生)
 君しか勝たん
- MC 1


・本編の半分以上を”楽しい”に重きを置いて展開するための工夫

今回における「前半に"楽しい"に振り切って曲数を稼ぐ」作りは、ソロ曲の使い方が「ブロック頭に配置し、複数人続けて披露させない」作りになったことで、曲数が多くてもスムーズに進む要因となった(前半だけで4つのブロックが生まれた)。そのおかげで、スローナンバーが中心となった「緩急ブロック」を作ることも出来、ブロック単位の緩急を効かせることでMC前の楽しいブロックを活かすことも出来た。また、時間帯に合わせた選曲も消化出来ているし、野外ライブの開放感・国立ライブの楽しさを感じれる構成も欠かさない。前半に”楽しい”にかなり振り切ることで、MC後の『リフレイン』『ギフト』という笑顔を見せない楽曲も活きるのだ。

②見せかけラストスパートブロックの前にソロ曲を置いた狙い

MCの時点で23/37曲も披露していて、曲数でいえばコンサートも終盤に差し掛かっていることになる。実際に松本と相葉のソロ曲が終わって『PIKA★★NCHI DOUBLE』のイントロが流れると「あっ、もうすぐ本編終わっちゃう」と感じていた人も少なくないはずだ。この寂しさを感じる仕組みは、『PIKA★★NCHI DOUBLE』にあるのではなくその前のソロ曲2曲にあると考える。そしてこの「寂しさ」こそがポイントだ。

コンサートを観ていて、まだ歌ってない曲を考えたことはあるだろうか。その脳内リストには定番曲だけでなく新曲も連ねるだろう。このコンサートはオリジナルアルバムを引っ提げた全国ツアーなので、アルバム収録曲がどれだけ歌われているかも気になる。中でも私のようにソロ曲の披露順が気になる人もいるだろう(余談だが、当時は相葉がトップバッターを務めることが多く、大野松本が終盤のイメージが強い。私の記憶が正しければ、相葉が5人目を務めたのはこのコンサートが初めて)。

現時点でソロ曲を何人歌ったか、そして披露順がどんなものか気になって実際に5人全員が歌い終わると「あとはこの後にカッコいい曲を歌ってからラストスパートやっておしまいかな」なんて考える。しかし、ライブ終盤の定番である『PIKA★★NCHI DOUBLE』のイントロが、5人中最後に披露された相葉のソロ曲のアウトロの直後に流れてくるのだ。当時会場にいた人がまだ歌ってない曲として思い浮かべるのは『Monster』ぐらいだろう。「ということは最後に『Monster』やってカッコよく締めるってこと?」。この時ほとんどの観客には、ワクワク以上に”寂しさ”が生まれる。楽しくて夢のような時間が終わってしまう。もっと目に焼き付けておかないと。そんなことを考えている観客に、実際にメインブロックに抜擢された『サーカス』のことなんか考えないし、その曲がコンサートでどう演出されるかなんていうことも考えない。

しかし、『Believe』が終わると櫻井が英語で何か話し始める。メインステージとセンターステージを繋ぐ花道にはダンサーが準備をしている。この瞬間から、寂しさが徐々に期待に変わっていく。

それらを全て見越した構成なのだ。『リフレイン』→『ギフト』からソロ曲2曲、そしてLSB。もっと言えばそれまでの構成だって全てがフリになる。そして『PIKA★★NCHI DOUBLE』のイントロによって生まれた”寂しさ”でさえメインブロックのためのフリにしてしまう松本潤、それを見事に演じ切るメンバー5人。これが「10周年コンサート以降の嵐」である。

ちなみにもう一つ存在する「10周年コンサート以降の嵐」の要素は、先述した通り『A・RA・SHI』を歌っていないことだ。コンセプトにそぐわないと判断したであろう2013年冬ツアー『ARASHI Live Tour 2013 “LOVE”』で歌われないのはなんとなく理解出来るが、このコンサートで歌われていないのは今となっては「”新しい嵐のコンサート”としての挑戦だった」以外全く腑に落ちない。実際に何かのインタビューで「1回だけ『A・RA・SHI』を歌ってないツアーがあるんだけどすぐやめた」と松本か誰かが発言していたのを覚えている。これに倣うとするならば日向坂も『JOYFUL LOVE』を歌わないという挑戦をしてみても面白い。

 

2017~2018年
『ARASHI LIVE TOUR 2017-2018「untitled」』

『Song for you』26/27曲目
いよいよ到達するデビュー20周年へと向かっていくメインとクロージング

このコンサートは個人的には一番の理想形だ。セットリスト、演出、構成、曲間、照明、特殊効果、映像など、一切無駄のないコンサートであり、嵐のコンサートの一つの到達点だと思う。そもそもアルバム『「untitled」』にメイン級の曲が並んでいる時点で"勝ち"だが、上述した要素の完成度とコンセプトがガッチリ組み合ったことで時間の進め方が格段に上手くなり、島田紳助ではないが27曲の使い方に感動した。

構成もシンプルだ。ジャンクションでブロックを区切り、ブロック毎に選出されたメインからブロックが始まり、その曲から展開しやすい曲を選出し、次のブロックへ。結果的に前半後半に3ブロックずつが形成された(後半は2ブロックだという見方も出来る)。イメージはこのような感じだ。

ブロック1:OPB
ブロック2:ユニット
ブロック3:ダンス、ファンサ
- MC
(ブロック4:ボルテージを元に戻す)
ブロック5:スロー、ミディアム、LSB
ブロック6:メイン

シンプルな構成ということは、メインも一般的にイメージされるであろうライブ終盤に配置されている。しかしこれまでと違うのは、①このアルバムとコンサートが、目前に迫った「デビュー20周年」を少なからず意識した作りになっていること、②その「デビュー20周年」と翌年「2020年」という切りのいいタイミングでグループ活動が終わるかもしれないこと、この2つの要素があることだ。

①このアルバムとコンサートが、目前に迫った「デビュー20周年」を少なからず意識した作りになっていること

なぜメインをクロージングブロックに配置したのか。それは、他の楽曲の選択肢がなくなったことでメインとそれに付随するクロージングだけに集中させたかったからだろう。それだけデビュー20周年というイベントは良い意味で重たいテーマだからだ。10周年どころか、リーダー大野の涙が印象的なデビュー15周年とは格別だろう。
デビュー10周年、デビュー15周年、デビュー20周年。私は熱心に彼らを追いかけてはいなかったものの、約15年前から日常の一部だったグループの大きすぎる節目。10周年の時は「まだまだ進化していくワクワク感」、デビュー15周年の時は「感慨深い」、デビュー20周年の時は「前人未到」、それぞれ私はこのような感想を持った。特に"前人未到"的な感覚は、untitledコンサートを観た時に感じ取った「これまでのオリジナルアルバムを引っ提げたコンサートツアーとは明らかに違うもの」から派生していたと後に気づいた。それぐらい、”国民的”と称されるほどのアイドルグループ(SMAPと嵐のみだろう)がデビュー20周年を迎えることが偉大で難しいことなのだと改めて思った。ただそれと同時に、21年目からのグループ活動には全く想像がつかなかった。
偉大で難しいとされる到達点を目前にすると作品にもその影響が出る。「その"到達点"を意識しつつも自分たちは自分らしくあり続ける」、「過去の若さゆえの危なっかしさは改めつつも栄光は置いていく」、「そしてただ前だけを見据えて走り続ける」。そしてコンサートにおいては、「"どこまでも続く夢への旅"とは、未完成を追求すること、即ち挑戦をやめないことであり、その全てをあなたに届けることだ」というメッセージを残して本編を締めた。

②間もなくグループ活動が終わるかもしれないこと

無期限の活動休止を発表した直後に『「untitled」』の収録曲が注目された。それは、アルバム発売前にはすでに活動休止に関する話し合いが進められていたことから、特定の楽曲に関して発売当時とは違う聞こえ方がするというわけだ。コンサートにおいても、『Song for you』と『「未完」』から構成されるクロージングブロックが、「デビュー20周年に向かっていくもの」だけでなく「グループ活動休止へのカウントダウンの始まり」になっていたことがその時分かった。最初はメンバー間だけで話し合いが進んでいたこと、その話の発端となったリーダー大野による告白・提案が2017年6月だったことから、コンサートツアー中まではメンバーだけがスタッフとは異なる想いを抱いていたのではないのかと推測される。そうだった場合(もしくはスタッフにも共有していたとしても)、この構成がメンバーにとって意味するものは到底想像し切れない。しかし、「無期限活動休止」というあくまでも希望を与える言葉のおかげで、ハワイを出発し日本・韓国・台湾などを経由した船が、再び"夢の先の未来"に向かって動き出すことを約束されたようだった。そして、デビュー20周年という大きな区切りを迎えるにあたってグループの歴史が詰め込まれた組曲『Song for you』は、活動休止発表後にはエンディングテーマのように聴こえてくるが、もうすぐで終わってしまう寂しさだけでなく希望を与え前を向かせてくれた楽曲ではないだろうか。なぜなら"どこまでも旅は続く"のだから。

 

メイン活用法のまとめ

今回取り上げた5つの活用法をまとめました。

1.セカンドブロック 1曲目
狙い(一例):コンサートやグループ自体の勢いを表現するために早々からメインを投入するポイント:後半の選曲(メインに匹敵するレベルの楽曲があるかどうか。軸を序盤と終盤の2つ用意したい)

2.コンサート後半序盤(≒中盤)
狙い(一例):①中弛みを避けるため、②新しく一から空気を作りやすいから(転換点となるMCの次にメインを配置する場合)ポイント:新曲の使い方(これまでのコンサートと差別化を図るため。オープニング、クロージングを新曲にするのがベストで、この3点を軸にしたい)

3.クロージング
狙い(一例):そのコンサートの全て(となる演出)を表現するためポイント:如何に定番を崩してクロージング以外に差別化出来るか(思い切った選曲と構成がベストだが、コンサートによっては敢えて定番を崩さないのもアリ)

4.クロージングブロックの一つ前のブロック
狙い(一例):尻上がりに一日のピークを作っていくためポイント:クロージングブロックの構成(ラストスパートを展開してそのまま締めるのか真面目なブロックとして締めるのか)

5.クロージングブロック(≠クロージング)
狙い(一例):①それまでにメインとクロージング以外の楽曲の選択肢を無くすことで、この2曲ないし3曲だけに集中させることが出来るから(ジャンクションとの繋がりを持たせるためにメインをクロージングに置かず、メインとセットになり得る曲をクロージングに起用)、②楽曲・構成・演出への自信を観客に示すためポイント:クロージングが終わったらすぐに暗転させる(カットアウト締め)


これらを見た時に、「オープニングでメインを投入すればいいのでは?」と思う人も少なくないはずです。「コンサートやグループ自体の勢いを表現するため」ならオープニングでもおかしくはないし、「新しく一から空気を作りやすい」ならオープニングが最適だし、なんなら観客の集中力が一番高いのはオープニングです。目的としても観客の状態としてもオープニングで全て解決するのではないでしょうか。
ですが、嵐においてはそれらを以ってしてもオープニングに置きません。これは「オープニングに観客が集中しているのは当然なのだからそれ以外の(懸念している)場面で集中してもらうよう仕向ける」という意図があるのではないかと推測しています。ここで、今回取り上げた5つのコンサートのオープニングを見てみましょう。 

2007年春『ARASHI AROUND ASIA+ in DOME』
『A・RA・SHI』
2008年夏『ARASHI AROUND ASIA 2008 in TOKYO』
『Love so sweet』
2009年『ARASHI Anniversary Tour 5×10』
『感謝カンゲキ雨嵐』
2010年夏~2011年始『ARASHI 10-11 TOUR "Scene"〜君と僕の見ている風景〜』
『movin' on』
2017~2018年『ARASHI LIVE TOUR 2017-2018「untitled」』
『Green Light』

もちろん"強さ"としては高い楽曲ではありますし、絶対に当時のセットリストに組み込まなければいけない楽曲でもありますが、正直この曲以外でも務まる選曲でもあります(もちろん全てのコンサートではない)。本稿におけるメインはあくまでも主観的な選び方なので必ずしも正解ではありませんが、もしかしたらオープニングをメインとしてるコンサートもあるかもしれません。ですが嵐においては、オープニングをジャンクションやダンスブレイクなどを活用して長い時間をかけて展開していくことは無いに等しく(「無駄なことはしない」という言い方も出来る)、反対にメインはそれらを活用し観客の集中を高めようと工夫しています。これらから、「嵐は、オープニングの重要性は観客の当然の集中力に任せて、一番観てもらいたい構成・演出が特に詰め込まれているメインブロックを、懸念している中弛みや観客の疲労・飽きを回避させるために活用することで、コンサートの厚みにも繋げることが出来る」と考えます。

 

結局『僕なんか』と『飛行機雲ができる理由』はどこに配置にするのが現時点でのベストか

これを考えるにあたって、以下がグループに必要だと考えます。

  1. オリジナルアルバムの発売、それに伴う全国ツアー
  2. コンサートのテーマが「新しい日向坂のコンサート」であること

 

①オリジナルアルバムの発売、それに伴う全国ツアー

つまり、「新曲が多いコンサート(セットリスト)をこのタイミングでしっかり作らなきゃいけない」ということだ。

日向坂のコンサート制作陣は「コンサートを開催する」ということ自体に重きを置きすぎて、新曲を「セトリを潤すもの」ぐらいにしか捉えていません。つまり、イベントのコンセプトや目的が先行しているため、「新曲を文字通りメインと設定したコンサート=新曲を1日のピークに出来ているコンサート」がほとんど作られていない状況です。「櫻坂と日向坂の合同コンサートを開くのはどうか、タイトルは『W-KEYAKI FES』」とか、「全国ツアーのリベンジを開催しよう、グループの勢いをさらに加速させるためにタイトルは『全国おひさま化計画』」とか。時期としては新曲発売(発表)直後でそれを見越した日程なのだろうけど、新曲の価値とセトリの様相に一貫性がない。さらに、本編終盤における楽曲の役割と位置が固定化されていたのでそこまでに余程の演出や構成を展開しない限りは後味は同じです。ただこれは「東京ドームまで」にしたいところ。

日向坂はコンサートに対してそれなりに力を入れていると思います。でもそれは「開催する」ことだけに注力したりセトリの構成を定番化させることではありません。コンサートを見据えた作品や、作品を起点としたコンサートを作るフェーズに入っていいのではないでしょうか。寧ろ今このタイミングしかないだろう。もちろん、そういったコンサートが全くなかったとは言わないが、『ひなくり2021』以降の所謂スタンダードなコンサートを作れるようになってきたこのタイミングで、コンセプトに楽曲が付随したものではなく新曲を起点としたコンサートを制作するべきだと思います。

2020年以降は新曲発売のスパンとコンサート開催のスパンに相関性が見られず、定番化された構成とも相まってセトリにおける目新しさをあまり感じられませんでした(演出の工夫は見受けられたが)。これらを解決するには、セットリストが20曲前後である場合、「最低でも半分の10曲を新曲で構成する」ことが前提になると考えます。そこから、シングルや定番曲の扱い、コンセプトに沿った過去曲のピックアップ、MCをどのタイミングで行うかなどの構成を練っていく。つまり、次回以降のコンサートテーマ(≠コンセプト)は「新しい日向坂のコンサート」だ。

②コンサートのテーマが「新しい日向坂のコンサート」であること

  1. 新曲を起点にセットリストを組む
  2. これまでの定番を全てリセットする
  3. MCの回数と位置を熟考する
  4. メインを最低2曲定めてそれらを軸に構成していく

ここでようやく本章タイトルに戻ります。結局『僕なんか』と『飛行機雲ができる理由』はどこに配置にするのが現時点でのベストか。答えは「もう1枚シングル出したら考える」。そりゃそうだ、前提が「新曲をあと10曲欲しい」なのだから。ただ、メインを任せられそうな風格をこの2曲は持っているし、これらを軸にしたコンサートを考えることはそれほど難しそうではない。ただ、7thにおいて難しそうなのはもう1つの全体曲『知らないうちに愛されていた』です。音源発表前までは、「これが前作で言う『思いがけないダブルレインボー』なのか『アディショナルタイム』なのかで、次回以降のコンサートも私のモチベーションも変わってくる」と思っていたのですが、実際聴いてみて「コンサートにおいてはまたなんとも言えない中途半端な感じ、扱いに困る、でも良く言えば色々な場面に使えるから柔軟性はありそう」という感じでした。もしかしたら次のコンサートのキーになるのはこの曲かもしれません。ただ、「中弛みを避けるために新曲を使う」みたいな適当なやり方だけは絶対にやりたくないし見たくないですね。

 

終わりに

今回取り上げなかったコンサートについて

今回選考から漏れたコンサートは、2014年冬に開催された『ARASHI LIVE TOUR 2014 THE DIGITALIAN』です。理由は、盤で言うとDisc-2に収録されている『A・RA・SHI』からの15曲(ラスト以外はメドレー)をアンコールと認識するかしないかが難しいからです。私はアンコールじゃないと思いたいのですが、(クロージングの)『Zero-G』と『A・RA・SHI』の間が明らかにアンコール前の感じで、ファンもそんな待ち方をしているので、今回はその15曲分をアンコールとみなしました。となると「untitled」ツアーと作りが似ているので割愛せざるを得ない、という感じで選考漏れです。

また『ARASHI LIVE TOUR 2015 Japonism』ですが、これもメインにおいて作りが似ているという理由と、メイン級の楽曲が多くどこを取ってもハイライトになる、つまり「明確に1つの場面をハイライトとして取り上げることが出来ない」ために選考漏れです。ですが嵐のコンサートとしては最高傑作だと思っています。このコンセプトを打ち出したタイミングも完璧ですが(デビュー15周年というアニバーサリーイヤーを終えた次の年)、オリジナルアルバムを引っ提げたコンサートツアーとしての完成度はグループの歴史において群を抜いていると思います。Japonism色を強め過ぎずにアイドルコンサートの要素と上手く調和させることに成功しているのです。これは「15年やってきたグループだから出来る」作品ではあるものの、バックストリートボーイズのコンサートを1回目は純粋に楽しんで2回目はメモを取りまくるような松本潤(敬称略)が、そして若い頃から歌舞伎からバレエまで様々なエンターテイメントをコンサートに落とし込もうと吸収してきた松本潤が、デビューから15年で培ったものを発揮する最高の機会になったことが大きいと思います。またこのコンサートがジャニー喜多川氏に褒められたということは、『Japonism』こそ「ジャニーズのコンサート」であり、ジャニーズの理念である「伝統の継承」を表現したものといえます。

 

秋元康系女性グループにおける[新曲発売→コンサート開催]の壁

彼女たちが新曲を発表する時はシングルという形態を用います。そこには、全体曲に加えて期生曲やユニット曲が収録され、合計6〜7曲が用意されます。内訳・パターンとしては、①全体曲4 + 期生曲3、②全体曲3〜4 + ユニット曲3〜4、という感じです。しかし本稿で取り上げてきた「新曲をメインとして扱うコンサート」においては、期生曲やユニット曲がメインとして配置されることは卒業コンサートやアニバーサリーコンサートなどの特別公演ぐらいでしかあり得ないので、メインの候補となるのは3〜4曲しかない全体曲になります。つまり新曲がそれしかないと言っても過言ではありません。この「期生曲やユニット曲を必ず制作すること=全体曲をシングル毎で3〜4曲に設定すること」は、セットリストを作るにあたって足枷になっていると考えています。それは前章で述べたとおり、「新曲発売のスパンとコンサート開催のスパンに相関性が見られなかった」からです。

現在は日向坂には3期生までしかいませんが、これから4期生が加入することで期生曲が1シングルで4曲も占めることになるだけでなく、新メンバーの有望枠をユニットとして起用したり、メンバーが増えたことで組み合わせも多彩になってユニット曲が増えたり、選抜制度も導入されるかもしれません。その状況下でも「新曲を7曲用意する場合、全体曲を1曲減らしてまで期生曲を4曲用意するのか、1曲増やしてユニット曲を収録するのか」みたいな問題の正解は今すぐに出すことは出来ませんが、これまでのようにシングルを1枚出す毎にイベントのコンセプトや目的が先行したコンサートが開催されては、「新しいメンバーが加入した」ことしか目新しさがない、つまり本質的には何も変わっていないコンサートになってしまいます。

新曲が6〜7曲しかないのにそれらをメインとしない、メインにしたとしても保守的なコンサート終盤の構成によって後味は同じ、なのにその定番を許せる程の構成や演出が練られていない。そして私が理想としている「多くの新曲を大前提として、少なくとも前回と差別化出来ているコンサート」を作るとするならば、やはりオリジナルフルアルバムを制作することが最善だと思います。せめてシングル2枚は欲しいです。

コンサートを開催するにあたってオリジナルアルバムを発売するメリットは「楽曲の豊富さから来るセットリストの選択肢が増える」ことだと考えます。『Japonism』や『「untitled」』のように、メイン級もしくはそれに匹敵する楽曲がオリジナルアルバムに多く収録されていると、必然的にコンサートの完成度も上がります(ただセットリストの選択肢が増えるため逆説的に作りづらくなることもある)。それらが少なくても、その他の収録曲でいかにメインまでもしくはメイン以降の流れを作っていくかが考えやすく、観客にとっても「展開が読みづらくなる楽しみ」が出来ます。さらに全体曲においては「この曲はこのように使われるのか」という一つの答えみたいものが提示出来ます。これらはもちろんシングル収録曲でも可能ですが、全体曲の新曲が10曲以上もあると、セットリスト全体に満遍なく配置出来ます。今まではこれを3曲で乗り切り、初披露の期生曲・ユニット曲で前回までとの差別化を図り、過去曲で細部の工夫をしていたのです。

対してデメリットは、「セットリストの工夫というよりも構成や演出を工夫しなければならない」ことです。より理由づけが必要になってくると思います。もちろん、新曲が多いとそれらを羅列するだけでセットリストに新鮮味をもたらすことが出来ますし、私が理想としている「新曲が多いコンサート」を文字通り達成出来ます。しかしそれだけが目的ではないのは誰しもが分かることだと思います。新曲発売のスパンとコンサート開催のスパンの相関性を考え直すことが大前提ですが、楽曲の印象を「イヤホンやスピーカーで聴いてる時」、「MVを通して聴いてる時」、そして「コンサートの要素として聴いてる時」で変えなければいけません。これらから私は、①全曲フルサイズを採用すること、②MVやドラマの世界観をコンサートに落とし込むこと、③装置や機構を使うだけで後は何も演出しないこと、このようなやり方が嫌いです。ただそれでも、オリジナルアルバムが用意出来たとして、それらをコンサートの要素として組み込む難易度は意外と高いと思います。楽曲以外での新たな要素や構成を見出すことがカギとなるでしょう。

『ひなたざか』がほぼベストアルバムだったので実質的な1stアルバムを発売するとなった時の理想は、全体曲10+期生曲3+ユニット曲7で最低20曲は欲しいです。日向坂のコンサートは基本フルサイズ20曲前後なので、この中から仮に3曲披露しなくても過去曲が入れるのは3~5曲。全体曲が10曲もあったら軸を3つに設定出来るだろうし、ユニット曲の中でもメインを設定すれば面白いコンサートになりそうです。特にユニット曲に関しては仮に今後このようなスタイルを取った場合、私が嵐のコンサートの楽しみの一つだったソロ曲の披露順、つまり「今回はとしきょんがユニット曲トップバッターか」とか「3期が大トリだ」などユニット曲の披露順で誰が今回において重視されたか・どういう狙いがあるかみたいなものが楽しめるという要素も出てきて、私の理想という話だけでなく客観的に見ても「日向坂ライブの特徴」として挙げることが出来るのではないでしょうか。

 

今後セットリストを考えるにあたって

これを本稿で書く必要はないと思いますが、私がこの「日向坂46のコンサートもしくはセットリストを考える」にあたって欠陥している点をあえて挙げます。それは、「グループ、メンバー、ファン、そしてスタッフが共有する、ストーリー・歴史・理念・背景・文脈・相関性みたいものを考慮した構成を汲み取れていない」点です。この視点がないことで、日本のアイドルらしい「パーソナリティに焦点を当てた構成や演出」を提案出来ません。それは、以下のツイートを読んでから痛感しました。

私は「ジョイラのあの演出がどういう意味を持つのか」について、このツイートを読むまで想像出来ませんでした。なぜメンバーの衣装が光ったのか、なぜメインステージまで歩いたのか。光る理由はともかく「2022年にもなって衣装にこんなギミック採用する?」とすら思って鼻で笑ってしまいました。しかしこれは、メンバー自身が虹に加わることで、メンバーとファンさらにはスタッフとの絶対的な関係を示した演出だったのです。さらにバックステージからメインステージに戻る演出は、「メンバーはこれからもおひさまと同じベクトルを向いて歩んでいく」という意思を表したものでした。

このような気付きが得られない理由は、単に私の想像力が足りていないだけでなく、メンバーのパーソナリティやグループの歴史・変遷の深掘りにそれほど没頭していないからだと思います。「ひなあい面白れぇ」から始まり「メンバーかわいい」が溢れてきたところで止まっているようなものです。なので、シングル表題はもちろん裏表題の考察をしたり、MVを何度も見返して小ネタを拾い上げたり、雑誌のインタビューを読み漁ったり、ラジオを聴いて比較的リラックスしたトークからパーソナリティを想像することもない。そしてそこに感情移入もしない。楽曲のフォーメーションにも興味がないし、グループの細かな変遷にもさほど興味がないので、文脈や背景を考慮した評価が出来ない。それはセットリストにも影響されていると思います。そういった意味では私のnoteは共感されにくいでしょう。

ただ私は、嵐やSMAPというジャニーズのコンサートを小学生の時から夢中になって観てきました。2020年春に日向坂をひなあいから好きになると当然コンサートも観るようになるのですが、個人的には良いと言えるものではありませんでした。しかし、以前から好きなアーティストのプレイリストを作る時は基本的にコンサートをイメージしていたり、「CD音源をライブサイズに編集してライブ音響再現アプリで再生する」という趣味、またそこから延長して「演出や構成を思い浮かべながら聴く」ことが好きだったので、いつの間にか東京ドームコンサートという大イベントの理想を作るようになっていました(調べたら2020年11月からはてなブログで下書きし始めてました)。このタイミングでコンサート哲学がかなり確立していることに気づき、はてなブログを開設、現在はnoteを更新しています。

日常の一部になっている日向坂46のコンサートを、楽曲の強さやコンサートにおける役割、適性、可能性、また意味付けされた構成や狙いなど、グループの背景や文脈を良い意味で無視した「楽曲単体を並べた時のコンサート」をイメージして、セットリストに関しては何周何十周もして可能性を探る。これらが私の視点であり楽しみです。これからもこのスタイルでやっていき、いつか私にとってのハイレベルなコンサートを観れる日を願って本稿を終わりにします。

『全国おひさま化計画2021』FINAL 配信ライブ 感想

この記事の答え合わせです。セトリを私なりの書き方をするなら以下の通りです。

 

本編

- OPENING VCR

 NO WAR in the future

- GREETING

 Overture

 青春の馬

- VCR 2

 アザトカワイイ

- SKIT(髙橋、森本)

 キュン

- DANCE BREAK 1(美玲)

 My fans

- DANCE BREAK 2(丹生、髙橋、森本、山口)

 ドレミソラシド

- STAGE READING(高本、丹生、松田、渡邉、山口)

 声の足跡

 こんなに好きになっちゃっていいの?

- MC 1

 何度でも何度でも

 酸っぱい自己嫌悪

 世界にはThank you!が溢れている

- MC 2

 君しか勝たん

- DANCE BREAK 3

 膨大な夢に押し潰されて

 キツネ

 誰よりも高く跳べ!

 JOYFUL LOVE

- INTERLUDE

 ってか

 

アンコール

 ソンナコトナイヨ

- MC 3

 約束の卵

 

全体の感想としては、結構観やすい構成だなという感じですかね。演劇の要素も少なくてそこまで飽きなかったし、中だるみになりかねないと懸念していた『何度でも何度でも』からのサードブロックも、ムービングステージを使うのではなく花道を歩いて移動する演出をそこで初めて使って(2006年ぐらいまでのSMAPの、アンコールにならないとバクステまで来てくれないあの感じです)視覚的な飽きを回避していたりと、結構良かったと思います。

 

気になるのは、オープニングブロックの『青春の馬』が終わってから。ここでハッキリと分かったのは、曲ありきでブリッジを構成しているということですかね。

 

どういうことかというと、まずは『アザトカワイイ』。スクリーンには「AZATOKAWAII GAME」と出てきて曲中にメンバーがゲーム(アトラクション)に取り組む。この曲のためのブリッジで、コンサートのコンセプトとは無関係(まあこんなこと言うのは野暮ですが)。

 

次の『キュン』、ここです。『キュン』の歌詞からインスパイアされた寸劇(アザカワと何の脈略もない)が始まります。寸劇といってもミスター・ビーンのビジュアル・コメディじゃないですけど、会話なしでモノクロに切り替わります。つまり前の曲が”動”や”陽”だとしたら、この寸劇は”静”と”陰”。同じブロックでも緩急がついているわけです。しかし、曲と寸劇の間がほとんどなくアザカワの余韻がかなり残っていた。これが気になりましたね。もうちょっと時間取っても良かったんじゃないかと。

 

そして『My fans』。アザカワで”かわいい”、キュンで”感動”と来て、Myfansで”ガルクラ”です。さらに次のドレミで”清涼”、足跡とこん好きはパフォーマンスに中心という構成。これはどうなのかなぁ。まとまりがなく見えるけど、バラエティ豊かともとれるし。でもブリッジとなるVCRやトラックがその要素になる曲と関連性がないからその曲が浮いて見えるし…。良いとも悪いとも取れますね。

 

ちょっと逸れますけど『こんなに好きになっちゃっていいの?』で、満を持して前に出てきた齊藤京子めちゃくちゃカッコよかったなぁ。ダブルセンターとかシンメじゃなくて単独センターが見たくなりました。

 

 

ここからは細かい所で気になった箇所を書いていきます。推敲は後日するのでまとまりのない文章になりますがお許しください。

オープニングブロック

- OPENING VCR

 NO WAR in the future

- GREETING

 Overture

 青春の馬

ムービングステージは所謂ジャニーズ式ではなかったけど、大所帯であれだけ踊るなら仕方ないかという感じですね。アリーナのムービングの使い方も難しいんですよね。

NO WAR終わりの挨拶はもう少し重めにやってよかったかもしれないですね。「アイドル戦国時代」のフリ→NO WAR→挨拶(MC)→Overtureの流れは、最初文字列で見た時は「やるやん!」となりましたが、映像で観たらあまりパッとしませんでした。それは挨拶(MC)の所が原因ですね。

 

セカンドブロック

- VCR 2

 アザトカワイイ

- SKIT(髙橋、森本)

 キュン

- DANCE BREAK 1(美玲)

 My fans

- DANCE BREAK 2(丹生、髙橋、森本、山口)

 ドレミソラシド

- STAGE READING(高本、丹生、松田、渡邉、山口)

 声の足跡

 こんなに好きになっちゃっていいの?

セカンドブロックは、「一貫性がない」とか「バラエティに富んでいた」とか先述しましたが、ブロックの繋ぎをMCではなくちゃんとブリッジコンテンツを用意していたところは良かったです。これのおかげで流れが途切れないので。特にコンサート始まってすぐにMCを挟んじゃうと前の曲までの雰囲気や勢いが活かせないんですよね。

 

あとこのブロックで工夫しているなと見受けられたのは、視覚的な飽きを避けようとしているところ。アリーナといってもやっぱりドームクラスよりも全然狭いのでずっとメインステージにいるわけにもいかないし、今回はムービングがありましたがよく見るセンターステージに行くタイミングも難しいし、だからといって十字型にしたり1周出来るようにステージを組んだりしたら客数減らさなきゃいけないし、とにかくアリーナは工夫するのが難しい。

 

今回は、メインステージを3+1の4つに分けていました。大体は1(1階)+1(2階)なんですけど、今回は1階のステージを3分割。さらにムービングがあるおかげで花道と客席がかなり間隔を取られたため、アリーナ席もより端(スタンド側)に寄せられた感じがありました。ですが3分割された左右のステージがちょうどファンの目の前になるようになっていて「これは考えられているな」と思いましたね。加えて、ちゃんとしたステージではありませんでしたが、その左右のステージも階段を使ってキャットウォーク的な所へ行けるようにしていましたし、アリーナクラスのセットとしてはとても良かったと思います。

 

セカンドブロックのブリッジは、新3期(死語)が参加していないシングルがちらほらあったことによって、彼女たちが多く起用されていましたがこれも逆手に取った良い演出・構成だと思います。

 

『声の足跡』はw-keyakifes2021でもクールダウンの役割として選曲されてましたがさすがに勿体ない感じはありますね。東京ドームでは”良い所”で使ってほしいです。

 

やっぱり1回目のMCまでは10曲近くやったほうがいいですね。オープニングは観客の心を掴みやすいタイミングなので立て続けにやった方が満足感が得られます。今回はブリッジが多くてアレでしたが、Overtureを除いて8曲もやってくれたので私は評価しています。

 

ラストスパートブロック

 君しか勝たん

- DANCE BREAK 3

 膨大な夢に押し潰されて

 キツネ

 誰よりも高く跳べ!

 JOYFUL LOVE

- INTERLUDE

 ってか

ラストスパートブロックは、『膨大な夢に押し潰されて』前のダンストラックが要らなかったんじゃないかなと思います。というのも、その後の『キツネ』の間奏でダンスブレイクがあるし、ブロックの緩急として『膨大な夢に押し潰されて』が選ばれてるなら、別にダンストラックで誤魔化さなくてもその後のキツネ誰跳べに活かせる力はあると思うからです。

 

『ってか』はライブ映えしますね。テレビ映えするかどうかはまだMUSIC FAIRしか観ていないので何とも言えませんが。

 

でもそれより気になったのは、『ってか』終わりの本編の締め方です。ここを「ありがとうございました~」で締めると曲が作った雰囲気や空気感が勿体ない。なのでこういうカッコいい系の曲は、終わったら特効打ってすぐ暗転するみたいな「逃げ切り型」のやり方が合ってると思うんですよね。アウトロ挨拶もいらないし、さすがに「さっさと締めろ」ってなっちゃいましたね。まあしょうがないんかなぁ…。

 

 

そのほかは、

・歌詞テロップをもう少し小さくしてほしい

・寄りが多い(俯瞰の画が9:1じゃなくて8:2欲しい)

・カメラ目線嫌いだなぁ(美穂は会場全体を観ていてグッドだった)

・口パクの方がやっぱりいい(2回目のひな誕祭の生歌のひどさを思い出した)

・特効打つタイミングが下手(野外ライブの放水のタイミングも下手だった)

こんな感じですかね。

 

最後は気になった所ばかり書いてしまいましたが、演劇多めのスタイルより断然こっちですね。何より「そこまで飽きない」。そして「バカにされてない」感じがあります。それに日向坂はパフォーマンス中心でも十分戦えるチームなので、今後もこのスタイル(演劇少なめ)で行ってほしいけど、ひなくり2021はまた元に戻しそう。

次は、2022年春のデビュー・独立3周年記念の東京ドームコンサートですね。ひなくりは配信あったら考えます。

コンサートの型(タイプ)について

『全国おひさま化計画2021』のセトリを考えた時の記事に書いた、

[馬→ソンコト→no war →しかたん]で行こうと思ったのですが、02〜04までがちょっとくどいかなと思ったんですよね。

(中略)

上述した「くどいかな」というのは、アリーナクラスで盛り上がる系統を3曲連続でやるのはさすがに長いかなという意味です(A+B+B+Bではくどい、A+A+B+Bなら大丈夫という感じ、伝われ、いつか記事にしたい)。

日向坂46「全国おひさま化計画 2021」セットリスト考案大会 - 気ままに日向坂

という部分。特に

A+B+B+Bではくどい、A+A+B+Bなら大丈夫という感じ、伝われ、いつか記事にしたい。

という部分です。この思考回路はセトリを考える時は基本頭にあって、文字通り「いつか記事にしたいな」と考えていたんですけど、ようやく書くタイミングが来ました。そしてやる気スイッチも押されました。

 

私は2008年・2009年あたりから嵐のコンサートにハマりました。その当時は、広い会場やステージセットなどに夢中でしたが、高校生ぐらいからiPhoneのプレイリストをセットリストっぽく組むようになってから、嵐のコンサートも当時大好きだったAKBのコンサートもセットリストを中心に観るようになりました。

 

セトリをいくつも見てきて実際に自分で考えてみると、特にオープニングブロックとクロージングブロックには、「型(タイプ)」があると気づくんですよね。もちろん、その型が同じアーティストで何度も使われてることは(マンネリを防ぐという観点から)多くないし、後述するもの以外にもたくさんの型(タイプ)があります。話すと長くなるのでとっとと解説します。

解説には日向坂46のコンサート(楽曲)ではなく嵐のコンサート(楽曲)を使って解説します。イメージがつきにくい人のためにも頑張って書いていきます。

 

以下で使うアルファベットなんですけどこんな感じをイメージしてください。これを頭に入れれば読みやすいです。

A:カッコいい曲(魅せる曲)

B:楽しい曲だけど会場を周る曲

C:楽しい曲だけどパフォーマンスに集中する曲

D:バラード、スローナンバー

E:クロージングナンバーっぽい雰囲気のある曲

F:ミドルナンバー

X:A~Cのどれか

※Fのミドルナンバーは、特にオープニングブロックに関してはブロックの最後にクールダウンの役割で選曲されることがほとんどなので、以下の解説では割愛します。

 

今回はブロックの曲数を、オープニングブロック:4曲、クロージングブロック:3曲にしてますがあくまで参考程度でお考えください。平均的にこのくらいの曲数かな、という感じです。

 

また、会場の大きさによってタイプを変更せざるを得ない時も出てきます。「この曲は東京ドームではBとして使えるけど、横浜アリーナだとCでしか機能しない」みたいなパターンも全然あるので、基本的にはドームクラスを想像してくださると読みやすいかと思います(嵐を例に出して日向坂のセトリを今後考えていきたいため)。

 

  • オープニングブロックの場合
    • 1.A+A+B+Bタイプ
    • 2.C+A+X+Xタイプ
    • 3.C+B+B+Cタイプ
    • 4.A+B+B+Bタイプ
    • 5.A+B+B+Cタイプ
    • 5-2.A+B+B+C+Bタイプ
    • 6.X+X+X+X+Z+X+X+Xタイプ
  • クロージングブロックの場合
    • 1. B+B+Aタイプ、B+B+Cタイプ
    • 2.(MC)+Dタイプ、(MC)+Eタイプ
    • 3.(JUNCTION)+A+Aタイプ
    • 4.(MC)+D+Eタイプ
    • 5. X+X+Eタイプ
    • 6. B+B+Bタイプ
  • 終わりに

 

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『全国おひさま化計画2021』のセトリを現地に行かずに批評する

現地で観てないやつがセトリやコンサート自体を批評するのは以ての外なんですけど、セトリ大好きマンなので色々言わせてください。ちなみに早く記事が書きたかったので感想やレポはほとんど見てません(ムービングステージがあるという情報は見た)。セトリはここからどうぞ

 

コンサートのオープニングについて

まず、コンサートの始め方。AKB系列の慣習であった「VCRから始まっても『Overture』を鳴らしてから楽曲を披露する」を適用せず、「VCR→曲→Overture」の順で始めたらしいがとても良い試みだ。ちなみに下の画像は私が半年前ぐらいに考えていたやつなんですけど、今回とちょっと似ていてテンションが上がりました。

 

f:id:ochiaiochiau:20210915213006j:image

 

私がこのように『Overture』を4曲目に入れた目的は正直忘れてしまったが、①マンネリ防止②長いオープニングブロックの繋ぎとアクセントのため、に作ったと思われる(SMAPのライブから影響された?)。仮にこれらの目的であるならばコンサートの幅が広がるので出来る限りやってほしい。そう思うのは、AKB系列と一般アーティストではOvertureの意味合いが異なるからだ。

 

AKB系列はグループ毎に『Overture』という楽曲が存在し、ほとんどはそれから始まる。普通は、聞いたことのない壮大な音楽が流れてスクリーンでメンバーの顔と名前が紹介されるみたいなやつがOvertureだ。だから一般的には"Overture"はコンサート毎に存在するのだ。でもAKB系列はほとんどありえない。例えVCRから始まっても楽曲を披露する前には必ずOvertureが入っていた。しかし日向坂がこれを覆してきた。これはデカい。楽曲としての『Overture』をコンサートのOvertureに当てはめなくてもいいと気づけたことがデカい。ちゃんとVCRを作り込めばそれがコンサートの始まりになる。自分たちの他のコンサートとも差別化出来るのだ。

 

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日向坂46「全国おひさま化計画 2021」セットリスト考案大会

乃木坂46の東京ドーム公演延期のニュースを見て「日向坂の秋ツアーはどうなるかな」と心配していたのですが、ツアー初日1週間を切っても延期や中止のアナウンスがされないので大丈夫そうですね。

 

さてこのブログでは度々セットリストについて考えていますが、この『全国おひさま化計画 2021』に関しても取り組んでいきます。

 

日向坂のコンサートは主に演劇とライブパフォーマンスを融合させた特徴的なタイプなので、このタイプに当てはめてセットリストを考えたり予想するのはめちゃくちゃ難しい。寧ろ、どういう物語(台本)なのかが事前に分からないため不可能。それに、コンサートタイトルだけでそのコンサートがどんなタイプなのか(上述した日向坂っぽいものになるのか・スタンダードなタイプになるのか)分かってしまうので、これまでのオンラインライブまではセトリを考えることすらためらっていた。

しかし、今回のツアータイトルは『全国おひさま化計画 2021』だ。この情報からはいつものようなタイプのコンサートになるとは予想しづらいのではないだろうか。つまり、『W-KEYAKI FES』や『2回目のひな誕祭』のようなスタンダードなタイプだ。早速考えていこう。

 

まずこれまでの日向坂のコンサートの特徴を大雑把に挙げたい。

  1. 披露曲数は18曲~25曲
  2. 最初のMCまでは約3曲
  3. 着替え待ちのMCが多い
  4. アンコールは3曲まで

基本的にこれに準じて考えてみる。

ポイントは、ツアータイトルが『全国おひさま化計画 2021』なので、マニアックな曲(特に『走り出す瞬間』の楽曲)をどこまでやるかだ。新規のために有名曲中心で構成していくのか(初全国ツアー・久しぶりの有観客なので、全国のおひさまは例え有名曲でも生で観たいと思っているかもしれない)、ちゃんと変化球入れて緩急をつけてくるのか。私は、ひらがな時代と合わせてもそこまで持ち曲は多くないので全然後者でもいいと思うが、まだまだコロナ騒動が収まらないことに伴ってコンサートの作り方も変えざるを得ない状況になったことで(大声を出すよう煽れなくなった等)、ライブ定番曲たちの「配置」と「どれかを思い切って歌わない決断力」みたいなものがカギになると考える。

 

また、大所帯アイドルの全国ツアーなのでセットリストを一つに絞ることは出来ない。それは、特にユニット曲が会場ごとで違うことが予想出来るからだ。

だから今回は、全体曲と期生曲は「マストで推していきたい」ユニット曲・ソロ曲は「ちゃんとした根拠はないけど推していきたい」というイメージで選曲しました。文字色は前者が黒、後者はとなっています。

 

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